top of page

8ミリフィルム企画スタート

執筆者の写真: 早大 映研早大 映研

今回のブログでは、8ミリフィルム企画を立ち上げられました、大森プロデューサーにインタビューをしました。



ーまず最初に、8ミリフィルム企画とはどういったものなのかを教えていただきたいです。


今回の企画は、名前の通り、8ミリフィルムを使って映画を撮ろうという企画です。この企画には、フィルム文化の存続と、映画産業の振興という二つの柱があります。


ーフィルム文化の存続とはどういうことでしょうか?


フィルム文化の存続では、インディペンデント映画において、フィルムを使った撮影を無くならないようにしたいという思いがあります。今、インディペンデント映画は大体デジタルで撮りますよね。そして技術が難しく、機材もニッチなものが多い、16ミリや8ミリに手を出さなくなってきています。作り手がデジタルに流れ、アナログから離れて映画を作っていくことが、まずいのではないかと感じています。『64ーロクヨンー』を手がけた瀬々敬久監督や、『スパイの妻』を手がけた、僕がもっとも尊敬する黒沢清監督も、大学時代は8ミリ、16ミリフィルムで映画を撮っていたんですよね。あらゆる映画の原点が特に8ミリフィルムにあると思っているので、インディペンデント映画におけるフィルム文化を存続させたいという思いがあります。


ーでは、映画産業への振興とはどういったことでしょうか?


昔、8ミリフィルムのフォーマットは、富士フィルムが製造していたシングル8と、現在もコダックが製造しているスーパー8 の二つがありました。しかし、シングル8は2014年に生産を終了してしまい、今はスーパー8しかありません。しかし、スーパー8でさえも今は取り扱っているところが少なく、現像所もアジアで一箇所(錦糸町のレトロ通販)しかないという状況です。レトロ通販のような現像所にお金を落とすためには、映画制作者が映画をつくることが一番なのではないかと考えています。こういった理由から、映画産業への振興を目標として掲げています。


ー大森プロデューサーの中で、このような目的意識は長くあったものなのでしょうか?


実は、中学生の頃から8ミリフィルムで映画を撮ってみたいという思いがありました。今回、8ミリフィルムで撮ろうと企画を立てる段階まで漕ぎつけたきっかけとしては、シナリオ研究会の倉庫を掃除していた時に、8ミリフィルムが出てきたということです。その時に周りを見渡したら、フィルム文化が危ない、現像所の存続が危ない、という状況に気がつきました。そこから、先ほど述べたような目標を掲げながら映画を作っていかなければならないという思いで動き始めました。


ー中学生の頃に8ミリフィルムに興味を持ったきっかけは何ですか?


中学生の頃は、とてもアニメに熱中した記憶があります。僕は少しスレていたので、昔のアニメ、『機動戦士ガンダム』よりも後で『新世紀エヴァンゲリオン』よりも前の時期のロボットアニメを見ていました。アニメが量産されまくっていた時代の、アニメが好きでした。僕が、8ミリフィルムでこんなことができるんだ!と思ったきっかけの映像は、『Daicon Ⅲ』のオープニングアニメーションです。当時大阪芸大の学生だった庵野秀明たちが全部手書きで作ったという狂気のような映像です。最初は僕はアニメに感化されて、実写よりもアニメが作りたかったんですよね。だから最初は8ミリで映画を撮りたいというよりは、8ミリでアニメーションを作りたいという気持ちがありました。中学生の頃から作りたいという思いはあったのですが、カメラが売っていなかったり、フィルムが高騰していたりして、当時はできませんでしたね。でも高校生の頃も8ミリで撮りたかったので、ずっと8ミリで撮る!という思いは持っていましたね。


ー8ミリフィルムの具体的な特徴を教えてください。


8ミリフィルムというのは、戦前からあったフィルムの一つです。他のフィルムの種類は、商業映画で一般的に使われる35ミリや、超巨大な予算で撮られる映画に使われる70ミリフィルム、実験映画やインディペンデントで使われる16ミリフィルムがありました。8ミリフィルムは主に家庭用、大衆向けに映画撮影ができるように、比較的新しく作られたフィルムの大きさです。特徴としては、フィルムに直接、針などで引っ掻いて、光学合成、今風にいうとCG のような効果を出すことができるシネカリグラフィができることがあります。16、35ミリでもできるかもしれないですが、そういった技法が使われるのは主に8ミリです。8ミリフィルムは商業とかけ離れてはいるものの、実験的な表現として多用されていました。ただ、ビデオなどの登場によって、1990年代から減産傾向に陥りました。そして現像序もなくなり、価格も上がり、使われる機会が減っていきました。


ー今回は8ミリフィルムを使って、どのようなテーマで作品を作られるのでしょうか?


もともとこの企画は2021年の8月から動いていて、ずっとどのような話にするか悩んでいました。そんな時に、10月の後半に父親が亡くなりました。10月の頭に僕は実家に帰っていて、それが最後だったのですが、その時に父親が「俺は半年か1年しかもたないだろう」という話をしていました。しかしそれどころか、その後10日ほど出なくなってしまったので、とてもショックというか、むしろびっくりしていました。半年か1年なら、自分の作品を観る機会もあったので、「話が違うじゃないか」という思いでした。父親が危篤だという連絡があってから急いで地元へ向かったのですが、会えませんでした。コロナ禍で、見舞いを拒絶されてしまいました。その時とても悔しくて、10日前にずっと地元にいれば会えたのだろう、という後悔も出てきました。その後、また8ミリフィルムの企画を考え直そうというときに、自分が親孝行できることといったら、映画しかないのではないかという思いが出てきましたね。そして、今回は亡くなった人と、残された家族の話にしようということで、自分の中で固まりました。そして、コロナウイルスが蔓延している状況からの脱構築を描けたらとも思っていますね。


ー具体的なストーリーは決まっていますか?


ガールミーツガールを描きたいと思っています。コロナ禍の世界と同じで、ディストピアの世界でも土地と地方という二項対立が存在していると考えました。都市にいる人間と、地方にいる人間という、暴力的かもしれないですが、人種がそもそも違う人間を邂逅させたいという思いがありますね。そこで自分と違う世界を目の当たりにして、これからどう生きるべきかというものを模索していく話にしたいと思っています。


ーキャストの方の注目ポイントをお聞かせください。


映画制作について大事なことは、シナリオや演出や、カメラをどこに向けるかというところがあると思います。しかし、今回、映画制作をするにあたって注目したいのが、いかに多くの人の目に触れさせるかというところでした。日本映画を見ても、キャスト先行で映画が作られていることに気がつきました。よって、キャストが注目されているキャストであればあるほど、映画も多くの人の目に触れられることがあるのではないかと思い、それを第一に考えてキャストを選ばせていただきました。


ー現在、キャストは3人発表されていますよね。お一人ずつご紹介願います。


初めに、早大映研の向井花さんです。彼女には度々、僕の作品に出てもらったりしています。演技力に確実なものがあり、僕の現場での癖なども把握されていると思うので、安心できるという意味で出演していただくことになりました。2人目は聖矢さんです。ワークショップを見学させていただいたといきに、キャラクターの履歴書を書いてきていて、役作りが素晴らしいと感じました。その時にお声がけさせていただいて、僕の企画に興味を持ってくれたことで出演していただくことになりました。

3人目は朝日奈まおさんです。あどけなさからアダルトな雰囲気までを醸し出せる稀有な方だと思いました。ぜひ一度自分の映画に出てもらいたいと思いダメ元でオファーしたところお引き受けくださったんです。助けに船ということわざがぴったりです。


ースタッフの方での注目ポイントはありますか?


まずカメラマンですね。撮影監督に村田さんを起用しました。僕が武蔵美生の展示にたまたま行っていたのですが、その時に面白い取り方をされていたのが村田さんでした。普段は舞台美術を勉強している方なので、新しいものを取り入れたいということでお願いしました。


ー早稲田大学繊維研究会ともコラボがあるのですか?


自分とは交わったことのない人たちとのコラボをして、より映画を知ってもらう輪を広げたいと思い、お願いしました。また、自主映画において、最近、衣装が重視されていないのではないかと感じています。エドモンド・ヨウ監督の『ムーンライト・シャドウ』を観たときに、とても着こなしが綺麗で、衣装の力の入れ方に強い印象を受けました。そして、自主制作映画でも、衣装にさらに力を入れれば、さらに映画が良くなってくるのではないかと考えたことをきっかけに、早稲田大学繊維研究会さんに依頼しました。


ー予算についてはどのように考えていますか?


今回は、自己資金をまず30万円くらいに設定し、クラウドファンディングでは、100万円を集めたいと思っています。しかし、もう少しかかるかなとも思っていますね。最終的には、200万まで行けたらと思っています。なぜ、こんなにお金をかけたいかというと、自主制作映画では、低予算で進めることが当たり前になってきています。しかし、撮影にか関わっていくださる、役者さんやスタッフさんには、きちんと対価を払うべきだと考えています。特に今回は、宣伝もきちんとさせていただいて、セミプロのような状況で撮影をさせていただきたいので、学生が楽しんで撮る感覚とは違うものとして考えなければばらないと感じています。そういったことを考慮に入れて、この予算になっています。


ー最後に、大森プロデューサーから、一言お願いします。


この企画では、自分の作りたいという気持ち以上に、日本のフィルム文化や、日本映画をもっと活発にしていきたいという思いが強くあります。一種の文化運動として機能させたいと思っています。そのためには、皆さん一人一人の支援を必要としています。新しい映画、より、誰でも楽しめる映画、そして、映画を作っているキャストやスタッフが、楽しいと思えるような現場を作るためにも潤沢な資金が必要です。どうか私に、力を貸してもらえないでしょうか。本企画の応援を、よろしくお願いいたします。

 
 
 

Comments


© 2024 Sodaieiken

bottom of page