皆様、いかがお過ごしでしょうか?今週は映研1年のハインズ麻里子がお送り致します。緊急事態宣言が長引き一家で自宅で過ごしている中、我が家の犬はすっかり甘えん坊になってしまいました。最近では夜食をせがんできたり、朝になっても布団から出てこなかったりします。この調子だといつか人間になってしまいそう……しかも、私が移動しようとすると、膝の上に座ってきて束縛するのです。まったく困った子です……私の愛犬自慢はさておき、『ご指名対談』のコーナーに突入致しましょう。今回は石塚さんと佐久間さんが映画『GO』について語って下さいます。どうぞ!
今回の指名:石塚 → 佐久間
今回の映画 『GO』
監督:行定勲
脚本:宮藤官九郎
原作:金城一紀
公開年:2001年
作品概要:主人公の杉原は「在日」であるという理由で、度重なる惨い差別を経験
する。しかし彼は「在日」なのではなく、「杉原」という一人の人間な
のではないか。人種差別の残存する社会を糾弾し、その中で生き抜こう
とする姿が、力強く描き出される。
この作品における差別表象について
石塚:この映画が2000年代初頭に作られていて、『パッチギ!』(2005年)って映画があるん
ですけど、その映画も2000年代初頭に公開されているんです。『パッチギ!』も在
日韓国人の話なんですけど、『GO』と『パッチギ!』のテーマ性が似ているように
感じました。
佐久間:ちょっとずれちゃうかもしれないけど、民族学校の話になったときに、彼らは日本
で生まれて日本で育った人が多いのに、それでも民族学校に通って、朝鮮語を習っ
て…母語といえる言語は日本語なのに、朝鮮語を習って、しかも主人公が日本の学校
に行きたいってなったときに民族学校の先生に「反逆者」だって言われてたのが、そ
の世界を私は全然知らなかったから、すごく新鮮に見えました。
石塚:佐久間さんの意見と似てますが、その時代を私たち生きていないからわからないんで
すけど、差別の強さを実感しました。正一(主人公の友人)のシーンや、桜井(本作のヒ
ロイン)の家族のシーンだったりとか、それこそ朝鮮人学校の先生の怒り方だったり
とか…最近の作品よりも表現が過激だったなと思いました。
印象に残ったシーンについて
佐久間:主人公が桜井の家に行った時に、桜井の父親と話をしていて、日本人は「日本」っ
ていう国の名前の由来を知っているかって話題になって、そこで桜井の父親が「日が
昇るところ」だから日本なんじゃないかって言ってて。それに対して主人公が、そう
いう考えもあるけど別の考えもあるんだってシーンがとても印象的で。海外の人と比
べて日本人は日本人としてのアイデンティティがない、と言っていた桜井の父親でさ
えも主人公が知っている「日本」の名前の由来を知らなかったっていう…アイデンテ
ィティの考え方が、在日韓国人とも違うんだなって印象に残りました。
石塚:私も日本人の考え方しか知らないんですけど、主人公の家に肖像画が二枚飾られてい
て、朝鮮人学校の教卓の上にも多分同じ写真が飾られていたのを見て、朝鮮人は日本
人より国民意識が高いのかなと感じました。印象に残ったシーンは、主人公が警察官
と話をする時のセリフで「自分の肌の色が緑色ならよかったのに」です。それが冒頭
のロミオとジュリエットの引用の「何であっても自分は自分だ」に繋がるのかなと思
いました。
この作品のメッセージ性について
石塚:在日韓国人についても重たいテーマとして扱ってるけど、ロミオとジュリエットの引
用が冒頭にあったように、自分のアイデンティティをどこにもつかっていう…「アイ
デンティティ」ですかね。
佐久間:うまく言えないけど、その在日韓国人への差別がある状況の中で、どうやって生き
ていくのかっていうメッセージに読み取れました。
『GO』、私はこの記事を機に初めて観ました。私も海外にルーツがあるのですが、改めてアイデンティティの捉え方について考えさせられました。新しい角度から世界を眺めるきっかけにもなるのが、映画鑑賞の醍醐味のひとつかなぁと思います。大学が春休みになり時間に余裕ができたので、愛犬と毛布にくるまりながら色んな映画を観ていきたいです。
(ハインズさんのお犬様はこんな感じでしょうか…? 編集・西田)
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